
獣医学部
佐藤 洋
獣医薬理学?毒性学
岩手大学獣医学部佐藤洋教授らの研究グループは、子牛の血液凝固検査に関わる条件検討を行い、今後のスタンダードとなるサンプル処理方法を提言しました。
血液凝固検査は、出血性疾患や全身状態を評価するために重要な検査ですが、採血後すぐに遠心分離できない場合も少なくありません。本研究では、黒毛和種子牛の血液を室温および冷蔵で保存し、採血から遠心分離までの時間が凝固検査値に与える影響を検討しました。その結果、採血後9時間以内であれば、室温?冷蔵のいずれの条件でも検査値の変動は10%以内に収まり、検査結果への影響は極めて小さいことが明らかになりました。本成果は、子牛の血液凝固検査における適切な検体管理の指針となり、産業動物診療の現場でより信頼性の高い検査の実施に役立つことが期待されます。
血液凝固検査は、子牛の出血性疾患や全身状態を評価するうえで重要な検査です。しかし、産業動物診療では採血後すぐに検査施設へ搬送?遠心分離できない場合が多く、採血から遠心分離までの保存条件が検査値に与える影響について十分な知見がありませんでした。そのため、適切な検体管理方法を明らかにすることが求められていました。
黒毛和種子牛(6週齢以下)から採取した血液をクエン酸ナトリウム採血管に採取し、室温(20~25℃)および冷蔵(4~8℃)で保存しました。採血後1時間以内に遠心分離した試料を基準として、遠心分離までの保存時間がプロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノゲン、アンチトロンビン(AT)などの血液凝固?線溶系検査値に及ぼす影響を評価しました。採血後9時間以内に遠心分離した試料では、室温保存、冷蔵保存のいずれの条件においても、各検査項目の変動は基準値に対して±10%以内に収まりました。これにより、適切な保存条件下では、採血後すぐに遠心分離できない場合でも血液凝固検査値の信頼性が維持されることが明らかになりました。本研究は、子牛の血液凝固検査における検体管理条件に科学的根拠を示した初めての研究の一つです。
本研究成果は、産業動物診療現場における検体の保存?搬送方法の標準化に貢献するとともに、より信頼性の高い血液凝固検査の実施につながることが期待されます。今後は対象疾患や月齢を拡大した検討を進めることで、子牛の血液凝固異常の診断精度向上や適切な治療方針の決定に役立つ基礎データとして活用されることが期待されます。
【掲載論文】
題目:The effect of storage temperature and time before centrifugation on coagulation parameters in neonatal Japanese Black calves
著者:Riko Ito, Keinosuke Sanada, Satoshi Inoue, Toko Maehara, Hiroshi Satoh*
誌名:Journal of Veterinary Medical Science
公表日:2025年10月14日
DOI:https://doi.org/10.1292/jvms.25-0143
用語解説
?プロトロンビン時間(PT):主に血管の「外側」が傷ついたときに、血液が固まるまでの時間
?活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT):主に血管の「内側」が傷ついたときに、血液が固まるまでの時間
?フィブリノゲン:かさぶた(血の塊)を作るための生体内物質
?アンチトロンビン(AT):血が固まりすぎるのを防ぐ生体内因子